家族の誰かが亡くなったときの経済的な問題に備えるのが、生命保険の役割です。
一番一般的な使われ方としては、一家の中で一番稼ぎがある人に生命保険をかけます。そうすることで、万が一その方が早く亡くなったときも、残された家族の暮らしが守られるようにします。
例えば、サラリーマンの夫に生命保険をかけます。そうしておくと、万が一の事故などで夫が亡くなるケースに備えられるわけです。
残されるのがペットの場合は無意味
ただ、これは残された家族が人間の場合です。
あなたが独り暮らしで、ペットを飼っていたとしましょう。そして、万が一あなたが亡くなったときにもペットが幸せに暮らせるように、お金を残したかったとしましょう。
こんな場合でも人間のように生命保険で準備ができるかというと、そうはいきません。ペットには相続権は無いので、文字通りペットに財産を残すことは不可能なのです。
仮に相続権があったとしても、ペットにお金を渡しても無意味ですよね。どんなに利口なペットでも、家計管理はできないでしょうし。
ということは、1人暮らしの方が亡くなると、ペットのその後の暮らしには何の保証も無くなってしまうわけです。
別居している家族には任せられないことも多い
一番現実的な対処方法は、家族にペットの世話を任せることでしょう。
同居している家族がいれば、引き続きペットの面倒を見るでしょう。仮に同居する家族がいなくても、別居している家族が何らかの手配をしてくれる可能性はあります。
ただ、この場合は、あなたが望むような生活をペットにさせることはできないかもしれません。特に別居の家族に頼むようなケースだと、今までと同じというわけには行きませんよね。
あなたが望むような対応を家族にさせるのは、家族にとっても負担です。望む方法で対処してくれるという保証もありません。
何かいい手は無いのでしょうか。
信託という仕組を使うことができる
フォーブスの記事によると、アメリカにはペット信託なるものがあるそうです。信託というのは何かというと、管理を任せてしまうことだと理解すると分かりやすいでしょう。
あなたは一定額をペットのために残します。契約の相手(信託では受託者と言います)はそのお金を使ってペットの面倒を見るという具合です。
信託は法的に拘束力があるので、受託者は履行義務を負います。それが不安なら、ちゃんと約束が履行されているかを確認する機能も付けられるようですね。
また、信託財産と受託者自身の財産は分別管理しないといけないことになっています。ですから制度上は、預かったお金を自分自身のために使うことはできなくなっています。受託者が得られるのは、契約した管理料だけということです。
こういう仕組があれば、一応は安心してペットを任せられるわけです。もちろんそれなりの財産がないと、信託契約自体が結べないですけどね。まあ、これに関しては、生命保険などを利用すれば解決できるでしょう。
1人暮らしの人でも、一応は安心してペットを飼えることになります。
日本では専門のサービスは無い
ただ、日本では残念ながら、ペット信託を専門のサービスとして行っているところはまだ無いようです。
信託銀行が遺言信託の一部としてサービスを提供しようと思えば、できないことは無いのでしょうけどね。金額的にペイしないでしょうから、積極的には取り扱わないでしょう。
仮に日本でペット信託のようなことをしようと思うと、自分で万が一の時の里親を探す必要があります。そして、その里親を受託者とした信託契約を結ぶ必要があります。
信託銀行ではなく個人が財産の管理者となるような信託契約を結ぶわけですね。こういうのを個人信託というそうです。
ただ、個人信託の場合は、本当に契約が履行されるのかという不安はありますよね。
信託契約は一応、法的な強制力が伴います。とは言え、それをチェックする仕組を作っておかないと、正しく契約が行われたかどうかなんて確認のしようが無いですからね。
特に契約者の死後のペットの世話ということになると、契約者自身が亡くなっているので、チェックはますます緩くなるはずです。
また、信託契約などという大げさなものを持ち出すと、里親も躊躇する可能性が大きそうですよね。ペットを預かるだけならいざ知らず、細かい管理方法まで指定されることになるわけですから。
相応の対価を受け取ってもやりたくないと言う人が多いでしょう。ですから、現在の日本でペット信託を取り入れるのは、ちょっと現実的ではないように思います。
近い将来専門業者ができるかも
ただ、万一のときにペットの世話を頼みたいというニーズは、確実にあるものと思われます。特に1人暮らしの人だと、気にしている人は多いのではないでしょうか。
そうであれば、ペット信託のようなことを本格的に行う業者が出てきても不思議ではないですよね。
当面はそうしたサービスができるのを待つしかないのかもしれません。個人で万が一の時のペットの世話をしてくれる人を探すのは、かなりハードルが高いですから。
自分の死後のペットの世話というのは、意外と難しい問題みたいです。
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