持ち家を持つと老後の暮らしが楽という話は本当なのか?

持ち家を持つかどうかという選択は、老後の暮らしに大きな影響を与えると言われています。

一番わかりやすいのが、生活費が大きく抑えられる可能性があるという点でしょうか。持ち家なら家賃の支払いは要りませんから、当然ですが、月々の生活費は小さくなるわけです。

その他にも、持ち家にすることで老後の生活と老後資金の貯蓄に様々な影響がありそうです。そして、必ずしも有利な影響ばかりではないようです。

ちょっと考えてみましょう。

住宅ローンを組むと生命保険の保険料を抑えられる

住宅を買うために住宅ローンを組むと、生命保険の保険料が抑えられる可能性があります。ちょっと意外かもしれませんが、住宅購入と生命保険保険料は関係があるのです。

住宅ローンを組んだときには、一般に、団信という生命保険に入らないといけません。団信というのは正確には、団体信用生命保険と呼ばれる生命保険です。

これはどんな保険かと言うと、住宅ローンの契約者が亡くなった時に保険金がローンの貸し手に支払われるというタイプの保険です。死亡保険金でローンの残りが返済されてしまうわけですね。

ですから、この保険に入っておけば、金融機関は借り手の死亡で回収ができないというリスクを無くせるのです。この保険のおかげで、金融機関は安心してお金を貸すことができるわけです。

これは借り手の側からしても、便利な契約といえるでしょう。なぜかと言うと、仮に世帯主である夫が亡くなっても、ローン返済が済んだ住宅が残るからです。

住宅ローンの返済が済んだ家があれば、その後の家族の生活費はかなり抑えることができます。ですから、生命保険料の保障を小さくすることができ、保険料も抑えられるということになるわけです。

保険料を抑えられれば、老後のための貯蓄をすることもできます。ですから、長期的に考えると、老後資金の準備にプラスになる面もあるということですね。

賃貸の家賃よりもローン返済の方が大きくなるかも

その一方で、住宅ローンを借りると、普段の生活が大変になる可能性があります。というのも、住宅ローンの返済額は、賃貸の家賃よりも高めに設定されることが多いからです。

ちょっと古いデータですが、フラット35利用者に対する調査によると、マンション融資利用者の1か月あたりの返済額は全国で12.06万円で、首都圏に限ると13.03万円なのだそうです。1

次に賃貸住宅ですが、住宅・土地統計調査という調査(総務省統計局)によると、平成25年の1畳あたりの賃料は3,166円/月ということです。また、共同住宅の1住宅あたりの延べ面積は48.95平米ということです。

ということは、1か月の家賃は9万3573円ということになります。こうしてみると、住宅ローンの返済額は家賃よりも高めに設定されてるのがわかります。

もっとも、住宅・土地統計調査にはワンルームマンションも含まれている可能性がありそうです。ですから、実際にはたいした差はないのかもしれませんけどね。

何にしても、購入する家によっては、持ち家にすると負担が増えることがあるということですね。これは注意が必要です。

ローンを抑えられれば貯蓄もできる

逆に言うと、住宅ローンの返済額が小さければ、その差額を貯蓄に回すことも可能です。しかも、上に書いたように、持ち家なら生命保険の保険料を抑えられます。

このあたりのことも考慮して、住宅購入をしてみるといいのではないでしょうか。

まあ、何にしても、身の丈にあわない住宅ローンを組むとその後は苦労するのは間違いありません。どうせ持ち家を持つのなら、自分の理想を満たしたいという気持ちも分からなくはありません。でも、トータルで見ると、住宅ローンは大きなものを組み過ぎないようにするほうが賢明でしょう。

持ち家だと老後の暮らしが経済的に楽?

上に少し書いたとおり、持ち家を持っていると、老後の暮らしが経済的に楽になるという人もいます。家賃がかからないので、その分月々の出費が減るという発想ですね。

もちろん、こういう考え方はわからなくありません。でも、そこまで単純な話でも無いようです。

まず、持ち家だと、家屋のメンテナンスは自分で行わないといけません。老後の住居ということで、バリアフリーにするための改修費用も用意しないといけないでしょう。

さらには、マンションの場合は、修繕積立金や管理費がかかります。この費用は馬鹿にはなりません。月々数万円単位でかかってきます。

特に若いころに買ったマンションなら、老後を迎えるころには、修繕積立金が高くなっている可能性も大きいでしょう。当初は修繕積立金を小さめに設定し、後で足りなくなって引き上げるということが起こっているようです。

あとは、自分が住んでいる場合は金額的にはそれほど大きくはありませんが、固定資産税もかかります。

いわゆるFPという仕事をしている人の中には、家賃がかからないから持ち家の方が有利というようなことを言う人もいるようです。しかし、持ち家にしたところで、意外とお金はかかるものです。

単純に老後のことを考えると持ち家のほうが良いとも言えないわけです。真面目に考えると、かなり難しい問題ですね。


  1. 平成23年度フラット35利用者調査報告より []

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