最近は、ラップ口座やファンドラップと呼ばれる商品で、老後資金の管理をする人もいるようです。退職金として入ったお金をラップ口座に移して運用するのです。
ちなみに、報道によるとラップ口座の残高は、既に4兆円を突破しているようですね。日本で一番大きい投資信託の残高が、1兆円規模のはずです。ということで、まだそこまで大きくはないものの、一定の顧客をつかんでいる金融商品という言い方ができそうです。
さて、このラップ口座やファンドラップを使って老後資金を管理するのは正しい方法なのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
ラップ口座とは
ところで、ラップ口座と言うのはどんな金融商品なのでしょうか。ラップ口座を使うことの合理性について考える前に、まずは、ラップ口座の定義から確認しておきましょう。
ラップこうざ【ラップ口座】
証券会社の個人向け資産管理サービス口座。証券会社が投資家の資金の運用・管理を行い,投資家は運用された資産残高に応じた手数料を一括して支払う。(大辞林 第三版)
ちょっとこの定義だと分かりづらいですが、金融機関に預けたお金の運用を全て任せてしまうのがラップ口座だと思ってください。ラップ口座では、投資家は最初に基本的な方針を示すだけで、その後の具体的な運用は金融機関が自分の判断で行います。
そして、実はこの定義にはちょっと間違っているところがあります。日本ではラップ口座は証券会社だけでなく銀行でも取り扱っていると言う点です。
メガバンクなどもでも、かなり力を入れているところがあります。もしかしたら、アメリカだと証券会社が取り扱う商品なのかもしれませんね。
ちなみに、類似商品にファンドラップもあります。ファンドラップは投資信託だけで運用されるラップ口座のことです。ですから、ファンドラップはラップ口座の一部であると理解すればいいでしょう。
元々は庶民向けのサービスではない
このラップ口座ですが、もともとは庶民に向けたサービスではありませんでした。一部の富裕層向けのサービスだったのです。
しかし最近は、電子機器などを使うことで効率化をし、比較的小さい額でも利用ができるようになってきたのです。比較的小さい額といっても、数百万円程度のは最低必要ですけどね。
小口の投資家にとっては手数料が高すぎる
ただ現在でも、われわれのような庶民が使うと、手数料が高くつく可能性が大きいです。投資額が小さい場合は、かなり手数料率が高めに設定されているからです。
例えば大和証券のファンドラップでは、5,000万円以下の部分には年率の税込みで1.512%の手数料がかかります。そして、この他に、投資信託の信託報酬などが取られる契約です。
これだけの手数料を取られると、上手くいく可能性はかなり小さくなるでしょう。なにせ、10年物国債の表面利率が0.4%前後というご時勢ですからね。
しかし、ファンドラップの手数料率は、運用を任せる額が大きくなればなるほど、小さくなっていきます。例えば5億円を越える部分に関しては0.432%しかかからないのです。
この0.432%という手数料ですら、ちょっと高いのではないかと個人的には思ってしまいます。1.512%となると、お金を増やす気が無いんだろうという数字です。運用を任せている個人投資家の資産が減らないといいのになと思ってしまいます。
5,000万円以下の小額の投資だと、手数料の割合が大きくなる理由は簡単です。こういう料金体系にしないと、金融機関も儲けることができないからです。
例えば、10億円の資産を運用しているとすると、手数料が年0.5%でも500万円の手数料が入ってきます。しかし、1,000万円の資産の運用だと、年0.5%の手数料だと5万円しか入ってきません。この額では採算が合わないと、金融機関は考えているわけです。
庶民は利用してはいけない仕組
はっきり言って、ラップ口座はかなりの富裕層のための商品です。数千万円程度の金融資産しかないのであれば、検討にすら値しないと思って良いでしょう。
そういう商品ですから、既に4兆円規模の取り扱いがあることに非常に驚いています。それだけ金融機関ががんばって売っている商品ということでしょうね。
最近は退職金の運用先で困っている人に営業をかけているという話もあります。まとまったお金が入ったはいいものの、どうやって運用していいか分からず困っている人を狙っていると言うのです。
何にしても、あまり有利な商品では無いので、ご注意を。投資信託でも買う方がマシなことが多いです。投資信託は投資信託で、ちゃんと選ばないと失敗しますけど。
退職金の運用は計画的に行いましょう。可能であれば、運用先を事前に調査しておく慎重さも必要です。それができれば、ラップ口座のような商品に引っかかることもないでしょう。
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